京都特有の蒸し暑さが体にまとわりつく梅雨の七月六日、
七夕を前にしたこの日、その暑気と湿気を吹き飛ばすような、
京都・清遊の会の恒例「和菓子講座」が行なわれました。
今回のテーマは「京の夏 祇園祭とゆかりの和菓子」
講師は会の主催者・中川祐子さん。
祇園祭にふさわしく浴衣姿で。
最初に画面に登場したのは「京のよすが」
「四畳半」の異名を持つ亀末広の銘菓です。
祇園祭の季節には神社の神紋をまとった団扇が。
季節感満載の京のお菓子ですね。
さて、今日のテーマは八坂神社界隈の老舗和菓子屋さん。
たくさんのお菓子屋さんの中から選ばれたのは
ほとんどの人がご存じなかったこの店
「鍵甚良房」さん
鍵甚良房 外観
紹介されたお菓子は
鉾餅(ほこもち) 今日の主役です!
紅がさされた味噌餡をクレープ生地で包み、
祇園さんの神紋が焼印されています。
形は鉾の網隠し。
なんとも見事で、祇園祭の風情満点のお菓子です。
しかも、その味のなんと美味しかったこと!!
三個並べると、稚児と禿、に見えます?
さらに講師の買い物秘話と京の和菓子屋談義が実に面白く
まるで自分が買いに行ってるような錯覚を覚えました。
鍵甚良房 店内
次のお店はこの店
「甘泉堂」さん。
ご存じ、水羊羹や「とりどり最中」で有名ですね。
甘泉堂 外観 通常の営業中です。
この店は、いろいろと乗り越えなければならない関門があるのですが(笑)
これも営業中なんです!
臨場感溢れる講師の話は抱腹絶倒!
実体験者ならでは、です。
甘泉堂の水羊羹(左)ととりどり最中(右)
そしてここで紹介されたのはなんと!
お菓子で作られた舞妓の花簪!!
どっちが本物かわかりますか?
向かって左が本物、右がお菓子です!
(※この工芸菓子はお店では見ることはできません)
京都の和菓子屋さんの技術の高さと底力を思い知らされました。
次はこのお店。
「豆平糖」で有名な「するがや祇園下里」さん
するがや祇園下里 看板
なかなか一度ではたどり着けないお店ですが
中川講師がとてもお好きなお菓子がこの豆平糖なのですって!
するがや祇園下里の銘菓 豆平糖
た、確かに美味しい。
美味し過ぎる……。
京都の老舗の味、おそるべし。
ところで、
このお店の近くにある有名なお稲荷さん
みなさんご存じですね。
辰巳稲荷さん
ですが、この近くにあるこのお稲荷さん、
知ってますか?
観亀稲荷さん
知る人ぞ知る稲荷社ですが、過日、ここである展観が行なわれました。
その時紹介されたのが、「祇園の練物(ねりもの)」
その昔、中御座の神輿を鴨川の水で清める「神輿洗い」の日、
神輿を待つ「お迎え提灯」に際して、南座の役者や花街の芸舞妓が
思い思いに扮装してお迎えし、本宮まで参拝にお練を行なったのが祇園のお練り。
昭和35年を最後に行なわれていないのですが、
その時の衣装が見つかったのです。
そんな行事があったのですね。
まだまだ知らない祇園祭の秘密。
講座風景と「祇園練物番付」の資料画像
さて、祇園祭の和菓子といえばこれ
そう。亀廣永さんの「したたり」です。
菊水鉾の菊水茶会で供される超有名な棹物ですが
このお菓子は、いまのご主人が考案されたもの。
それほど古くはなかったんですね。
亀廣永 外観とご主人
人のよさがお顔にでたご主人。
お店の暖簾も亀、壁掛け時計も亀。
誰ですか? ご主人も、なんて言うのは(笑)
中川講師の話は、何度も何度もそのお店に行き
粘りと笑顔で食い下がり(笑)
最後にはまるで昔からの友達のように
明かされない秘話まで聞き出してしまうという
京都を知り尽くした抜群の取材力に基づくものばかり。
その証拠に紹介されたお店の人たちはみな笑顔で写っていました。
身振り手振りで大熱演の講師
言いたいことだけ言って帰る講師が多い中
聞きたいことを教えてくれる中川さん。
きっとこれからファンがどんどん増えますね。
笑顔が魅力の中川さん
亀屋則克の浜土産(左) 神紋入りくず焼(右)
大極殿本舗の吉兆あゆ
柏屋光貞の行者餅
他にもとてもとても面白い話や美味しいお店、
お菓子が披露されたのですが
全部は明かさないでおきましょう。
どれもがまた聞きたい、
そう思わせるお話の連続でした。
これからも
季節とのつながり、行事との関係、
日本人の生活に密着した和菓子やお花、また意匠など
中川講師でなければ話せないテーマを
これまた独自の視点で紹介していただけることでしょう。
あっという間の一時間半。
今後もとてもとても楽しみです。
最後に一つ。
実は、今回紹介されたお菓子、
鉾餅も豆平糖もしたたりも
すべて実際にいただくことができました。
普段は前でしゃべっているある人がもてなしたみたいですが
どのお菓子も、出されるタイミングが微妙にずれていて
どれもが早すぎるやら、早すぎるやら、早すぎるやら!
ご参加の皆様、申し訳ありませんでした(涙、涙)
Y.T記